魚屋の息子からのファンレター

角上魚類 戦略

ちょっとたまにはコンサルタントっぽい話をさせてもらおうと思います。

私の実家は魚屋なので、昔から毎日魚を食べてました。
私が小さい頃はまだウナギは安かったので、夏休みは基本的にウナギ丼ぶりと、そうめんのローテーションでした。
このローテーションに飽きたころに、ウナギではなくアナゴ丼ぶりが挟まれてくるような日々を送っていました。

今思うと、とても贅沢なのですが、当時は「またウナギなん?」という感じです。

そんな魚屋で育ったので、本屋で「魚屋の基本」という本を見つけた時は、迷わず0.3秒で購入を決めていました。
この本は「角上魚類」と言う新潟出身の魚屋を取り上げている本で、「角上魚類」は今や東京にも進出しています。
あまり店舗数は多くないですが、かなり安くておいしいです。魚屋の息子的に、超おすすめのお魚屋さんです。

この本がめちゃめちゃ面白い!
Amazonのレビューを見ると星2つしかないのですが、魚屋の息子的には最高です。

新潟から始まり、今では関東で20店舗ほど展開している角上魚類。
戦略は、仕入はバイヤーに任せて、バイヤー目利きで勝負する、というものです。
さらに店舗に必ず調理場を設けており、仕入れた魚を時間の推移とともに調理し、現場で値段を変動させつつ、必ず廃棄にはせずに売り切る。
こういった販売方法をとっているため、目利きにかなった魚であれば、目新しい魚(例えばコチとか?)も仕入れるし、それが常に同じ魚に飽きてきたお客さんにもヒットする。

ざっくり言うとこんなところでしょうか。
特に、「目利きで勝負」と言うのは、私の父親も良く言っていたことで、共感できました。
私の実家の近くには当然スーパーもあったのですが、そこと差別化するために、「俺は目利きで勝負してきた。高くても良い魚を仕入れている。これはスーパーにはできない。」と父親はよくプライドを持って言っていました。(父親は今はもう引退しています。)

このような思い出も振り返りながら、とても楽しく読んでいたのですが、1点だけ気になることがありました。
本の中で、角上魚類の規模が徐々に大きくなってきたとき、イオンの社長の目にもとまり、イオンの社長が角上魚類の売り場の見学に来たことがあったようです。
その時、イオンの社長から「素晴らしい。是非わが社も見習わなければ。」というコメントをもらい、角上魚類も鼻高々、という内容でした。

この部分を読んだとき、私は、「・・・ほんまか?」と思いました。

イオンの戦略は規模の経済で、業務を標準化・マニュアル化し、事業を拡大させて同じような商品を大量に仕入れ、徹底的なボリュームディスカウントを行う。
これは顧客目線からすると、同じ商品が必ず仕入れられている、という品揃えの安心感があります。

このようなイオンの戦略と、角上魚類の戦略は相反するものだと思います。
目利きに頼ることはマニュアル化ではないですし、目利きに頼るにはスキルの育成に手間がかかる。
このため、事業の拡大にかかる時間は犠牲にしているはずです。

なので、イオンは角上魚類を絶対に見習わない。見習ってはいけないのだと思います。

とても良い本でしたが、ちょっと気になりましたね。

一方である意味、「書籍に書いてあることも疑問を持つ」 ≒ 「コンサルタントの基本である前提を疑う」ということの重要性を改めて認識できました。

ということで、結論星5つ。

Amazonのレビューは投稿したことないですが、心の中でもっと売れてくれ、と願っています。
魚屋の息子より。

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